文京うまれ

自由と知性

俺はこの先生に救われたと思う

リーダーシップと個別の能力とは違うと思う。

 

医者になった瞬間から「ベテラン並みに使える医者」だった自分は上級医との関係もちょっと特別だったと思う。幼少時から病院に出入りしていたし、医学生の時にはずっと父親を手伝っていたから、医者になった瞬間にもう病棟実務は2年ぐらいこなしていたのと同じ状態にはなっていた。

 

最初に自分の上級医になってくれた女医さんはクラスでもトップクラスの秀才だったから、自分の知らない知識や技術をたくさん披露してくれた。よく可愛がってくれたし公私にわたってお世話になった。

 

次に自分の上級医になってくれた女医さんは、先の女医さんと同学年なのだけれど、頭の良さよりはリーダーシップで人を惹きつけるタイプだった。何しろ人気がある人で魅力的。宝塚のスタータイプ?その人が自分を叱りつけたんだな。

 

「あなたね、自分がわかるからってカルテを書かないのはだめよ。カルテにはちゃんと記録しなさいよ」と何度か言われたのだ。もちろんその意味はよく理解ができた。理解ができても、もともと頭が良い方でノートも取らないタイプだったから、筆がなかなか進まない。それでも「カルテは読んでくれる誰かのためのもの」という意味をしっかりと心に刻んでカルテを書いた。

 

すぐに電子カルテの時代になって、もともとブラインドタッチが速かったので、これは自分の時代になったな、と思ったものだ。電子カルテにはものすごい量の記録をしています。

 

医者は頭がいい連中ばかりで、なかなか叱ってくれる人などいない。けれど、その先生に叱られるのは気持ち良かった。そして自分の弱いところを見せるのを躊躇しない先生だった。患者さんの具合が悪かったら狼狽えてしまう、そういうところも人間味があった。そんな人はなかなかいない。それがリーダーなんじゃないか。今でも大学で教育に従事していて、きっと沢山のファンがいることだろうと思うよ。