文京うまれ

自由と知性

心配のコスト

不定愁訴の塊みたいな患者に、

 

「あなたの心配を金額にしてごらんよ。あなたの命は年3000万円ね」

 

と言うと、すごく困惑した顔をして、

 

「私はそんなに高くありません」

 

と答える。

 

「いやいや、だってこうやって外来に来てここにいるのだって私の命をある程度使ってるわけだし、ちゃんと見積もってご覧よ。あなたはその心配に人生のどのくらいの時間を使い、そしてその心配の結果が悪かった時に予想される損害をさ、計算してみなって」

 

「わからないみたいだから計算するけれど、例えばあなたが心配している病気って10万人に2人ぐらいの病気ね。あなたの寿命を10年短くするとして3億円でしょ。その10万分の2だから、6000円だよね。すなわちその病気を心配するのに6000円以上のコストをかけるのは間違ってる。それをあなたの時間あたりのコストに換算すればあなたは人生のうちでその心配をしていいのが、1時間45分なんだよ。もう1時間45分以上悩んだでしょ?」

 

「悩んだ」

 

「じゃあ終わりにしたら」

 

「そんなもんなんでしょうか」

 

「人生限りがあるので、そんなものなんです。第一あなたはその病気じゃないんだし」