文京うまれ

自由と知性

ソーシャルディスタンスの誕生

パンデミックにおいては、学校を閉鎖することがもっとも重要な戦略であり、そうした感染の機会を減らすソーシャルディスタンスの考えは2007年に非医薬品介入(NPI)としてブッシュ政権で誕生した。そういう歴史の話です。学校を閉鎖することで、広がる感染症…

自省と慢心

自分は今朝、英文の医療エッセイを読んでいた。(もちろんGoogle翻訳でだ)大抵は知らない先生によるもので(優秀で有名なんだろうけど)でも自分の目に入るのだからそれなりに大勢が読むんだろう。 英文で書かれたそういう医療エッセイは、日本語で書かれた…

「私の癌にはこの薬しかなく、この薬が効かなかったらもう方法はない、そう言われたのです」

「私の癌にはこの薬しかなく、この薬が効かなかったらもう方法はない、そう言われたのです」「なるほど、あなたの気持ちはわかります。一方で医者の気持ちもわかるかもしれない」「私はそれを聞いて、なにかとてもがっかりしてしまい落ち込んでいます」「確…

見えている未来

主に英語の文献を読むようにしている理由は、なるべく未来を俯瞰的に見ましょうという姿勢の研究者が多いからかもしれない。 例えば総合医というような概念があって、欧州とか米国にはそれっぽい役割の医者がいるけれど、日本の場合はなんちゃってだから、少…

数は力

橋本病(Hashimoto's disease)は自己免疫機序により生じる慢性甲状腺炎の事で、日本人医師の名前が命名されている数少ない病気の一つ*1だ。 私は診察時に甲状腺は必ず診るので診断が遅れたことはない*2が、疲れ、体重の増加、寒さ、関節痛および筋肉痛、便秘…

歴史家と歴史学者

「トゥキディデスの罠*1」という言葉を世の中に思い出させたのはバラク・オバマ大統領だという事で、さすがリベラルアーツ教育をしっかり受けた人という感想。自分が知ったのはごく最近で、新聞にこの言葉が煩雑に登場するからです。 ここで思考を飛ばして「…

ギャップ

急性の病気はかなり専門性がものを言います。 例えば自分は胃腸に関して強いですから、他の医者がビビるような状態であっても平気で診る。患者さんがこうなったら死んでしまう、ここまではOKのラインがわかっているから。 つまり急性の病気を救えるかどうか…

小田原について

小田原厚木道路に荻窪インターチェンジが出来たのは昭和54年の事です。 小田原には旧華族の別荘は結構あり、それらが戦後に分割、分譲されて高級住宅になったりマンションになったりしていました。分割されても300坪以上ある家ばかりで恐ろしく大きい。絶対…

性悪説

命が助かったときに、感謝するどころかこれに似たことを言う人々がいて、そういう人たちは一種の弱者だと考えている。(お金を払わない、とごねる人々も病院には沢山いるそうだ) きっと今まで「親切」「善意」に出会わずに生きてきてしまったんだなあと。 …

人生とバトン

外来が人生相談みたいになっているが、それも年をとったせいか。 子供を授かるという事は次世代にバトンを渡す、という意味と自分は考えているけれど、それは他人を教育したりすることも違いはないので、子供がいる事にこだわる必要はないのではないか、と言…

こんな感じか

toyokeizai.net 結論に違和感があったので書いておく。Aクリニックでは診断のためにレントゲンは必要。手術前に呼気と吸気で2枚撮ったりブラをCTで評価するからC病院でのレントゲンは必要。効率の点で問題があったとすればB病院。 しかし、効率を優先するか…

勘について

私が経過を診ている患者の場合には膵臓がんについて勝手に心配するのは徒労であろうと思う。今までは上手くやってきた。逆に自分が検査をしようとしたところをいろいろな誘因で邪魔されて手遅れになった経験ならいくらでもある。年一回の定期的なエコーww…

利き耳

利き腕、利き足があるのと同様にたぶん利き耳もあるんだろう。 僕の声は聞き取りづらいので、良く患者さんが「あんだって??」(志村けん風に)と耳を僕に向けるんだけれど、 例えば右耳を僕に向けるって事は右耳のほうが良く聞こえるんだろうな、と思い、 …

デパートの地下

最近は伊勢丹に行っても三越に行っても全国のお菓子が置いてある。 大工さんにお出しするお菓子を購入しようと思い、のぞいてみるとほとんど食べたことがないものばかりで目移りしてしまった。自分が食べるわけではないのに。 この季節は暑いので、冷たい萩…

演技

冠攣縮性狭心症や睡眠時無呼吸症候群のあるBMI30以上の方が、まだ、タバコを吸っているということは、今まで医療機関でよほど揉めたりした過去があるのではないか、、、と医師は身構えてしまう。私もそうです。 その疑問を封じ込め、「今まで禁煙を勧められ…

同調させなさい

親が癌になった、自分も胃が痛い、と来院する人があまりにも多い。 それで話を聞いていると、胃が痛くなる理由は、患者である親とぶつかっているからである、大抵は。 しかも病気になった当人がのんびりしているとか、家族の思った通りにしないとか、そうい…

ポジティブさを作る

例えば高異型腺腫という、癌に近いポリープが過去にあった人がずっと内視鏡検査を受けなかったり、ピロリ菌を除菌した人が以後全く内視鏡検査を受けないことはある。「検査が嫌いですか」「先生のところの検査は嫌じゃない」「ではどうして受けないの?」「…

ボンド紙

アメリカに紹介状を書く仕事が連続した。 1つ目の紹介状はレターヘッドを自分で作ったんだけど、そのファイルを保存しなかったらしい。 2つ目はレターヘッドを作る気力もなくて、ただ文字だけを書いた。 すると、コピー紙に印刷したその紹介状がとても貧相な…

もちろん、こらえる

頭が柔軟じゃない人には、頭が柔軟じゃないですね、と言っても通じるわけがないというものすごく単純な事実がある。 アルコールをすごく飲む人が下痢をしていたりすると、そんなんアルコール+慢性膵炎を最初に疑いますやん。教科書の最初に出てきますやん。…

のんびりしたい

エスカレーターの片側空け。 世の中の正論としては、「非常に効率が悪いので、二列に並べ」である。それに異論はない。 ただ、個人的には、エスカレーターは非常に怖くて、将棋倒しになれば容易に死ねる乗り物である。だから逃げられる空間が欲しい。急ぐ人…

2万円の壁

「生命保険に入るにあたり、すべて申告したほうが良いと思いましたので先生からご紹介いただき大腸内視鏡検査を受けた先生のところに行って保険に入りたい件をお話したところポリープは取っていないのだから関係がないと怒られてしまいまして不満です。私は…

患者と乖離する

早期がんを見つけた時に、最初はショックがないように話すのであるが、「ほんとに病院に行かなくちゃいけないんですかあ?」という患者にはむかついてしまう。

医学部教育は冷たい(でもしょうがない)

医学部の教育は知識の詰め込みに見える。 文章にして何万ページかわからないが電話帳10冊分以上勉強させられる。 詰め込みではなくて、背後に原理原則があり、それをいろいろ方法で理解させようとしてくれるのだがやはり難しいかもしれない。 自分は背景が理…

ポジショントーク

ホリエモンが胃癌の原因は99%がピロリ菌って本で書いたらしくて、 それに対して99%は嘘だ、と癌専門医が噛み付いてた。 噛み付いてたけど、その癌専門医の胃癌の知識はとても浅いものだった。 そんで僕はピロリ菌についてはホリエモンの言い方でOKと思う。 …

カーテン・カーテン

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12698779 ミシガン州にアンアーバーという街がある。デトロイトから西に1時間弱ぐらいである。名門であるミシガン大学があり、学園都市みたいな雰囲気の良い場所である。 日本の企業関係者は何千人もミシガン州に住んで…

土曜日

自分の医者としての特性として、 割りと困ってる患者を診療することに長けているので、 土曜日みたいな 「時間が余ったから来た」 「仕事があるから土曜日」 みたいな患者を診るのがひどく苦手。 土曜日の診療はバックアップがないから医者のほうは必死 患者…

足るを知れなくなる=認知症

45を境にして人間はゼロ歳に精神年齢が戻っていく、 と患者家族に説明し、 87歳の老人の振る舞いを3歳児だと思って見よ、 と言うとそれで救われる家族がいる。 ある老人は自分のわがままを聞いてもらえないと 「人権侵害だ」とモラルハラスメントし、傷つく…

学生実習

例年のことだけれど学生実習がはじまるので(来年4月から)レジュメを書いていた。 基本的に学生はみな優秀だ。 最近はハンズオンの実習が学生に好まれ、たまたまいろいろな手技を経験させてあげられる自分は人気らしい。それは結構なんだけれど。 実習とは…

敬意と本性

患者に対して敬意を払う、というのが外来の約束事で、自分はそれが良く出来ていると思う。実際本当に敬意を払っていないと必ずボロが出るものである。演技では出来ない。 しかし徹底的に敬意を払われてしまうことは少し患者にとっては怖いことかもしれない。…

新しいモダリティ

モダリティは「検査の種類」をあらわす言葉です。なかなか日本語にしにくい。 MRIとかCTとか内視鏡とかエコーとか、それぞれ特定の検査の種類を示す言葉なのでそれら検査を表す単語をモダリティと呼ぶのです。 モーダルというのはたぶん関係があって、コンピ…