文京うまれ

自由と知性

盲点いろいろ

大きな肝臓がんがある人に、
スタチンが処方されていて、
違和感を感じたまま、
逆紹介(大きな病院から開業医へ紹介)されたので、
処方した。

で、保険診療では減点された。
減点されてはじめて「そういや禁忌だったよなあ」と。
でもこうも思った。「この人背景に肝硬変ないから、やっぱり禁忌じゃないな」と。

その違和感の原因だけれど、
禁忌も何も、普通肝臓がんがあればコレステロールは下がるもので、
スタチンが肝臓がんに投与されるという事はないのだ。
それじゃあこの人にスタチンはどうなのかっつー話なのだが。

自分は投与したほうが良いかもしれないと思ったりした。
というのは、この人はその大きな肝臓がんを化学療法で叩いているので、
急激に腫瘍崩壊が起きると血栓症やDICが起きる可能性があるからだ。
実際AFPは20000が100ぐらいに下がっているので、
相当なスピードで腫瘍は崩壊しているらしい。
体のダメージも相当だろう。
そのときにスタチンを飲んでおくと、回復は遅れる可能性があるが、
サイトカインストームを予防する働きがあるんじゃないかなと。

少なくとも今まではこの人の命を延ばしていたんじゃないかと。
だから減点はされたけれども、それはしょうがないなと思ったし、
かといってやめます、とも言えない感じがしたし、
大病院はそこまで考えてるわけがないけれども、
第一そんなに大きな固形癌があるときに神奈川県じゃ「あぶないから」という理由で化学療法をしてくれるところが見つからずにわざわざ静岡まで行ってるわけだし、禁忌も何も、危険性を顧みずにチャレンジしてるわけだから、今うまくいってるものを変えるってのもなーみたいに思ったりはする。

とはいえ、不足しがちなこの人の情報。
検査や治療は大病院で行われこちらに一切報告がなく
患者や患者家族もわかっているようでこちらがどういう情報がほしいかまるで理解しておらずとりあえず薬クレクレになってるのはこちらの実力を甘く見積もってるとしか思えない。血液検査の紙切れ一枚あれば読み取れる情報量が違うんで、本人家族からいろいろ聞くより役だったりするわけで。大変そうだと甘くして「結果もってこいや」と強く言わなかったからなー、と後悔している。