文京うまれ

自由と知性

最後まで話しなさいよ

おならがものすごい、という患者がいた。

いつからすごいのかとか、どんな感じのおならなのかとか、そういえば昨日の夜何食べたとか、いろいろな事を聞くわけだ。

話疲れたみたいで、

「先生、どうして俺はこんななんだ」というから、

「おいおい、まだ100個ある理由を10個にすら絞り込めていないんだぞ、まだ話すんだ」と答えてる自分ってSか?

で、だいたいわかったのでシャツを脱いでもらって診察をした。

 

「さっき100って言ったけれど、あれは全然嘘じゃない。医者ってのは、誰もがそうかは知らないけれど、数えきれないぐらいの病名が一瞬で浮かんでくるものだ。でも絞り込めたから言うけれど、歯をしてるだろ?それが原因だ」と言うと、まだわからないようなので、

「歯をしていると、ご飯を噛まずに丸呑みするでしょう?そうしたらガスは増えそう?減りそう?」と聞いたらわかったらしかった。

「で、結論は出たので、歯が治ったらおならの問題は解決するんだけれど、俺がやぶ医者だったとして、その診断ははずれかもしれない。例えばあなたも受付で『自分は胃が悪いんじゃないか』って言ってたようだけれど、確かに胃の病気や、あるいは肝臓や膵臓の病気でもガスが増える場合は考えられる。聞けばあなたは病院が嫌いで今まで金輪際一度も検査を受けたことがないな?だったら提案だけれども、検査を受けてみるかい?」と聞くと、

「うんうん」と頷いている。

「ところで、どうしてみんながうちに来るのか知ってるのかい?」

「だって有名でしょ」

「どうして有名なのか知ってるのかい?」

「知らない」

「あのさあ、検査が上手いからだよ!こうやって口八丁だからだと思ってるのかい?安心して受けると良いよ」

というと笑顔で帰った。

 

後日検査で早期がんが見つかったりして、第二のドラマがはじまったりするんだけどさあ。ありがち。

 

だいたい有名ってことだけ知っててどうして有名なのか知らないって人大杉

ちなみに有名なのは俺じゃないんだけど、それは黙っておいた。