時間の貸し借りの話
お子さんが重大な病気になっている時のお母さんの張りつめ方が、
ほんとに、一番、張りつめている。
全身をアンテナにして、集中をしている。
疲れ方もすごくて、ちょっと押したら倒れるんじゃなかろうか、と思うほど。
下手な慰めが通用するはずもない。
こちらは何かできる事があるだろうか。
その人の持っている時間を分解して、
俺にかかる時間を最小にすることだろうか、
と思った。そうすれば他のことに時間を使えるだろう。
病院は、赤の他人同士で時間の貸し借りをしあう時がある。
こういう時には、他人の時間をちょっと借りて、
そのお母さんにちょっと貸しても良いんじゃない?
俺の外来には良い人が多いから、文句は言わないので、
ちょっとその人達の時間を拝借して、
お母さんを優先したって、今日ぐらいは良いよね?
そうすれば、お母さんは無駄に待つという事なく、
さささっとさ。
病院は、時間の貸し借りをする場所だ。
予約の順番だとかさ、
そんなのはとりあえずの決まり事で、実際には
今日は貸し、今日は借り、そんなゆるい雰囲気が患者さんの間に流れている限りは、
どんなに混んでいても、
こっちは疲れる事はないなあ。