文京うまれ

自由と知性

巨大な権限

学生が来たので、医者がどうしてコンプライアンス違反をしてはいけないかを話した。

 

「今患者に、自分はこの先の可能性をいくつか話したよね?」

「話しました」

「確定診断がついていないのに、だ」

「はい」

「でもそれを医者以外の医療従事者が出来るか?」

「うーん」

「ナースや検査技師が可能性のある病気を患者に話すことは通常は許されていない。ましてやマッサージ師が好き放題相手に『内蔵が悪いんじゃないか』などと言うのは許されるのだろうか」

「そういえばナースや検査技師は話しませんね」

「可能性について話していいのはおそらく医者だけに与えられた権限で、それは強大だってのは理解できる?」

「?」(この子は理解が出来なかった。残念だ)

「要するに患者をいかようにもコントロールが出来てしまうという魔法が使えるようなものなのだ。だから悪用してはならない」(内海とか近藤のようにね)

「?」(やっぱだめだ、この子)

「高い倫理観を持ちなさい、コンプライアンスは遵守しなさい、ただしコンプライアンス遵守が相手を危険に晒す可能性があるときには良心に従って行動しなさい」

「?」

 

 

この子は保険のルール、請求方法などについては食いつきが良かった。