文京うまれ

自由と知性

パトロン

血液検査はA先生、薬はM先生でもらっている患者さんがいた。

「どうして分けるのですか?」
「なんとなくです」
「あなたが世話になりたい先生の収入を増やすのが筋ではないですか?」
「そうですか」
「それが世の中ってもんでしょ。ちなみにあなたはうちに検査受けに来てますが、内視鏡なんてこちらは一銭ももうかりませんからね」
「そうなんですか」
「だからあなたは私のパトロンではありません」
「え」
「この付近の人々が、私に血圧でかかったり、血液検査を受けたりしてくれます。その方々が私のパトロンです」
「私も先生に血圧かかりたいんですけど」
「いえ、夜中にね、息が止まっちゃってもね、『止まっちゃった』『今行くからまってて』という会話はね、近所の人の特権ってもんです。あなたは遠いからそれは出来ない」
「う~ん」
「別にあなたが検査を受けるなと言っているわけじゃあありません。でもあなたは検査を受けるにあたり、まずこの近所の人々に感謝をして下さればいいんです」
「わかりました」
「話を戻しますが、きちんとした医者の収入が増えるという仕組みにはこの国はなっていません」
「はい」
「ですから患者さんがきちんとした先生を支えたいと思ったら、そのパトロンになる必要があるってことです。血液検査なんか、ちょろっとすれば儲かるんですから、それこそ生活を支えたい先生のところでお受けになるのがよろしい。わかりましたか?」
「わかりました」

結構きちんとした先生ほど、生活に困窮しています。
良い先生を支えられるかどうかは、患者さんの質にかかっていると言えると思います。
今後医院の倒産は増えるはずですが、その時にまっとうな先生が路頭に迷わないように、お願いしたいのです。