文京うまれ

自由と知性

詐病との対決

胃が痛いという人がいて、
薬を使ってもまだ痛いという。
我慢が出来ないと。

その言い方は詐病的であって、
たぶん心気症である。
今までもずっとその繰り返しだった人である。
それでも律儀に何か見落としがないか、
時間をかけて診察をする。

さて投薬をしようという段階で、
実は薬が残っているという事がわかった。
普段緻密な投薬の仕方をするので、
そういう事はあり得ない。
痛いのならば、むしろ早く薬がなくなるはずである。

「前にもらったのがあったからそれを先に使った」と言い逃れをした。
いや、前に出していない薬なのだよ。
嘘は必ずばれる。

普段、とても優しい医者を演ずる事にしている。
なぜならば患者の本性が出やすいからである。
本性がわかっていてもなお、手抜きをしないのは、
今日もそうだったけれど、病気はどこにも転がっているからで、
毎週1-2回は「命って簡単に無くなるよな」
を体感しているからだ。オオカミ少年は簡単に死ぬ。

もう一つの理由は、正攻法で患者の詐病と対決してみて、
自分の知識が先に尽きてお手上げになるのが先か、
相手が音を上げるか、勝負してみたいからだ。
今のところ自分の知識が尽きて、あける引き出しがもうない、
という状態になったことがないのが救いである。