文京うまれ

自由と知性

ペットと同じじゃん

自分の飲んでる薬も知らない、血液検査も知らない団塊の世代が来たので(9割がそうだし、残りの1割も全然だめだ)「それじゃあペットと何が違うの?」というと多少むっとしたようだ。

 

「ペットは獣医を選べませんから」が答えなんだけれど、むっとするらしくてあんまりその答えをしてくれる人はいない。

 

「あんたどうして自分の境界を飛び越えて俺にかかるわけ?自分の領域の中にいれば良いじゃん、一生。どうして外に出るんだ?」

 

「だって先生の評判が良いですから」

 

「あんた、これからヨットでアメリカに行くっていうのに何にも用意をしないのか?」

 

「あのな、まだ朝元気だから言うけど、君らのこういう受診の仕方はナンセンスなんだよ。世界のどこでもこんな自由な医療はない。俺が大学にいたころもそうだったけれど、そもそもあんたがたを信用していないわけだ。だから大学では予診があって、血液検査、尿検査、レントゲン、心電図全部やってからやっと俺に会うことが出来る。結局どうなるかっていうと壮大な医療の無駄が起きている。そうやって一部の人が貴重な医療費を使ってしまう。自分はそんなのは看過できないね。だから自分の領域の中では、無駄な医療がなくて幸せな人生を送って欲しくてこういう田舎に病院をやってるんだ。そこが評判がいいからってあんたたちはズカズカ土足で上がり込んでくるけれど、それでも俺はあんたがたを信用して、こうやってまず話を聞いているわけだ。それなのに自分の飲んでいる薬も知らない、検査の結果もわからないってなんなんだい?しかもあんたの場合は旦那がこの前かかって同じ説教くらってるじゃないか。そういう掲示もしてあるんだよ。一体どういう了見なのかまずそれを伺いたいね」

 

「すみません。私が今まで受けていた医療ってなんなんでしょうか」

 

「自分でもっと考えろ、ということを指導しろとはヒポクラテスの誓いには書いてない」

 

「しかもひとりよがりではだめで、公衆衛生に一人ひとりが貢献する意識を持たねばならない。そういう遠い理想に向かう第一歩をうちではやってます。そのチームに入りたいの?最終的にはあなたの得になるとは思うんだけど、頭使うんだよ。もとに戻ったほうが良いかもよ。あんたたちは勝ち逃げ組で死ぬまではなんとか国が面倒見てくれるんじゃないの?」

 

「お願いします」

 

「ほんとに?とりあえず今かかれれば良いとか思ってない?」

 

「がんばります」

 

で、とりあえずの診断が得られたらみんな元の医者に帰って行ってジャブジャブ医療費を使うのだ。