文京うまれ

自由と知性

紹介状の日にちが1年も前のものである

患者が持ってきた紹介状の日にちが1年も前のものであったら必ずワケありである。

したがって、初見で「癌だな」と思ってもにっこり笑って患者の訴えに淡々と対応し、絶対に「どうして来なかったの?」とは言わない。

 

癌のショックを和らげるためには、丁寧な診察をするに尽きる。

そうすると、癌以外にもボロボロと病気が2、3見つかるものだ。

 

癌は普通の病気だ。

それを怖がって1年も紹介状をそのままにしてしまう人がいるのは、マスコミが作った癌は怖いという幻想と、どこかのおかしな医者とか無責任な健康食品屋が「癌はなおる」とかつく嘘の両方が原因だ。

病気に貴賎があるものか。馬鹿め。

 

メンタルに弱い人はそれに巻き込まれる被害者だ。

しかしまあやりようもあるわけで、癌を他の病気と同列に扱うことである。

「癌だな」と思っていても、意外と色々見つかるのでこちらも整理が大変である。

最終的には癌なのだが、患者のほうもやや混乱するけれど、少なくとも「どうして早く来ないのか」などと医者に責められるよりははるかにましだろうと思う。

 

そういう気遣いをあとで「こんなに診断に時間がかかって」とぶち壊しにする外科医もいて、ほんとふざけんなと思う。「どうしてこんなになるまで」という医者にまともなやつはいないよ。

 

 

手遅れになっていてあとで患者さんが、「あのとき勇気出しておけばよかったんですよね…」と言う時があって、そのときかける言葉は見つからないんだけどね。「おれはあんたの生き方は立派だと思ってるから」と言うぐらいだろうか。答えになってない。