文京うまれ

自由と知性

会話は楽しい

そんなにインテリジェンスが高すぎない、人の良い人が良い。

正直なのが良い。

 

 

咳、2週間。痰が多くなってきたって。

 

 

おれは呼吸器じゃねーよ。でも、インテリジェンスが高いわけじゃないから、許せる。

普段インテリぶってる奴だったら、許せない。

 

「こんにちは、ずいぶんのんびり来ましたね。不養生ですか?」

「え?なに?不養生?したかな…うーん」

「どうしたの?咳?痰が多いの?」

「はい、咳が」

「すごい?」

「すごいってわけじゃないけど」

「夜寝ている時に?」

「寝ている時ってわけじゃないけど」

「仕事は休んでいるの?」

「仕事はしてるんです」

「どこで?」

「施設で」

「ああ、施設で風邪のキャッチボールあるある?流行ってるわけ?」

「ええ、そう」

「でも3週間も咳が続いていたらちゃんと専門医に紹介するから」

「え、そう」

「3週間も続いているとね、結核とかね、咳喘息とかね、考えなくちゃいけない病気がいくつもあるのよ。だからあと一週間経って良くないなって時はもう一度来ること、良いですか?胸の音聞きますよ。なんでこんなに着てるんですか!」

「それもいけないのかな」

「そうです。基本は薄着、上着で調節。下着を厚くするのは都市型の生活には合いませんよ。それに病院に来たら脱げないじゃん」

「そっかー、汗かいちゃう」

「はい、肺炎、気管支喘息心不全はなさそうだ、ちょっと気道の炎症があるだけでしょうから、二次感染が起きないように去痰剤っていう薬だけで様子見ちゃいますよ」

「風邪じゃないの?」

「2週間も治らないのは風邪とは言わなくてなんか病名つけちゃいますね。上気道炎とかね。こじつけですから忘れていいです。忘れちゃいけないのはあと一週間経っても良くならない時にまた来ること、良いですね」

「わかりました。あとー」

「血圧か」

「そう。先生に言われて、測ったんだけど、高すぎて怖くてやめちゃった」

「ああ、そうか、ごめん。風邪引いたら脈速くなるじゃないですか、それと同時に血圧も上がるんですよ。教えてなくてごめんね。それで薬あなたやめていたけれど、出しておこうか?」

「これからずっと飲みます」

「うん、それが良いと思いますよ。あなたあの薬すごく効いていたじゃない。飲んだら明日からスパッと下がるタイプの薬でもないけれど、じわじわ下がるから安心してね」

 

この人は、アドヒアランス(薬を自分でちゃんと動機づけをして飲める能力)が悪い人だったので、今まで何度か血圧の薬を自己中断している。その時にどう受け入れてもらうかは色々な手があって、種まきを会話のあちこちにしておく。いつも風邪なんかで外来に来るな、と言っているけれど、その反対にどんなに下らない風邪でもきちんと話を聞いて診断してお話をすることは患者さんに役立つことがある。だから風邪では来るな、と言ってます。