文京うまれ

自由と知性

CRPS

私が「脳科学者」という職業を好きじゃないのは、彼らが抑制系の神経線維について議論をするところを見たことがないからだ。

中枢神経系の神経線維の数としては抑制系のほうが何倍も多い。一つの神経細胞には多数の神経終末が結合しているんだけど、興奮系だけだったらあっという間に脳が沸騰するのは多少でも理科を学んだ人ならば中学高校生でも理解できるはずだ。

抹消神経においては興奮系のものがメインではあるけれど、神経節では当然抑制系も活躍していることだろう。

CRPSという病気は、注射をした後に、腕全体が痛くなってしまうとか、ひどいと全身が動かなくなってしまうとか、そういう反応を示す人々がまれにおられるが、特に知られるようになったのはサーバリクスの注射でこの反応を生じる子供が日本では多かったことだろうか。

私自身はCRPSは抑制系の破たん、特に抹消神経の、と理解している。

私の友人に、線維筋痛症の疼痛に対して「ツボ」刺激を試みている人がいる。何十万円か払って講義を受けるとツボを教えてもらえるのだそうで、それを患者さんに施術するわけだ。友人は無料で施術している。良い人だ。

例えば右肩の烏口突起の痛みの場合、左肘から5cm上ぐらいの上腕三頭筋を圧迫すると痛みは抑制される、というようなマニュアルがあるのだそうだ。鍼灸とほぼ同じ発想だと思うんだけども、抑制系を理解するにはちょうど良いサンプルだと思って書いた。

ところでこういうCRPSを発症させてしまうきっかけは、痛みをコントロールしなかった場合だ、と良く言われる。これも感覚的に「そうだろうな」と理解できる。痛み止めは使わない、という人たちは、そういうケースでは可哀想なことになる。帯状疱疹の時、椎間板ヘルニアの時、最初から十分量の痛み止めを使うことである。合併症の予防にはPPIをそういう時にこそ使ってほしい。

がまんすることが美学だ、と思っている患者さんがいるけれど、ちゃんと痛みは訴える、という事がとても大切だと思う。