文京うまれ

自由と知性

怖さが取れなかった人

ものすごく怖がりの患者さんだという事を知っていたので、
鎮静剤を使った内視鏡の時に、途中で起こしながら検査をしなかった。
(通常は寝すぎないように声をある程度かけながら検査をします)
途中で起きてしまいパニックになられるよりは安全なのです。

私は複数のお薬を混ぜて投与する人で、
アメリカだとフェンタニルとヴァーセドか何かを使うんですけど、
(そこにプロポフォルいれると完全に寝る)
それと似たような感じです。

寝過ぎると誤嚥が怖いので、そこそこ使います。こちらの問いかけに少し反応してくれる程度です。

その方が3年ぶりに来院されて、胃の痛みが取れないそうなので、
内視鏡をして評価したほうがいいのではないか?と言うと、
時々そういう人がいるのだけれど、こういう反応になった。

「え、、内視鏡怖いです」
「悪い結果になるのが怖い人と、内視鏡そのものが怖い人がいます、どちら?」
「うーん、わからない」
「前回の内視鏡は辛かったの?」
「いえ、全然覚えていないんです。人にはうんと脅かされて来たんですけれど、痛みも何もなくて楽だったと思います。でも記憶がないんです」
「そっかー、じゃあ結果が怖いの?」
「いろんな事を考えてしまうんです。胃がんとか」
「あなたは胃がんにはならないんだけれど、今エコーで確認します」
~エコーの検査でType4の胃がんは否定が出来ます。でもこれを自信もって出来る医師はほとんどいないので、患者が私を信用するかどうかはわかりません。でも私がこの手の診断を外すという事はありません。信じないならそれは患者の勝手です~
「エコーではやはり胃がんはありません。自分が考えているのはNSAIDと言う痛み止めで胃がちょっとあれた状態。安心して内視鏡受けて下さい」
「え~やっぱり怖いです」

という感じです。
何をしたって怖さが取れない人々というのはいます。
完璧な検査をしたって無理なのです。
私はその限界を良く知っていると思います。
渋りながらも検査を承知した患者さんに私は言いました。

「次の検査ではあなたが意識を失わないような量の麻酔を使いますよ」
すると
「わーい、良かった」みたいな表情を見せました。
やはり意識が無くなったことも怖くなった理由の一つなのです。
なんでもかんでも怖いんです。

病的に心配症な人の場合、パニックを起こされるよりは、しっかり麻酔をかけたほうが安全なのは間違いがないです。
でも一度やってれば、次回は多少コントロールは効きます。
ある程度意識のある中で、「検査は痛くない」と理解してもらうと、少し怖さが取れますので次回は少し麻酔の薬を減らす予定です。