文京うまれ

自由と知性

出てくるときは出てくる

たくさん症例をみるようになると、
例外的によくない経過をたどる患者さんを沢山診ることになります。

するとこうなる医者が多い。
1)患者さんを短い間隔で診ようとする。
2)過剰診療になる。

病院では医師も複数いて平均以上に過剰診療しようとするとチェックが入るからその傾向はありませんが、開業医ではあきらかにそういう傾向が出てくる。

これは儲けよう、というわけではなくて、自分が悔しい思いをしたトラウマから来る行動なのです。そういう悲劇は見たくない、という。

でもね、これって世の中に貢献してると言えるんでしょうか。少数の患者さんを相手に保険の無駄遣いをすることが。目の前の患者さんだけを幸せにすりゃ良いんでしょうか。

そういう過剰診療を支えるのは「脱落する患者さんが多い」という事実です。
だって1日に診られる患者さんは限られていて、その人々をどんどん過剰診療するんだから、医者を雇って規模を大きくするか、脱落者を多くするか、しかないんです。
脱落した患者さんはどうなるんでしょうか。

そうじゃない人もおられるけれど、自分は「専門医、というふれこみで開業をしているお医者さん」は過剰診療をしているかどうかを見極めるのがとても大変なので、基本的にはあまり患者さんには紹介してはおりません。自分の友人ぐらいです。実力がちゃんとわかってるのは。平均よりほんのわずか過剰かな?ぐらいが紹介するととても喜ばれるレベルです。

患者さんがまれに不幸な経過をたどる、というトラウマに打ち勝って濃厚じゃない診療を維持するのは大変です。むろん自分に負けて濃厚診療すりゃ済む話です。誰も文句は言わないし、名医とすら言われるでしょう。

でもそうならないように、ならないように、と心がけてきた結果、少し変化が出てきましたよ。

1999年から日本で診療してますけど、ずっと他院の結果、投薬を見続けて来たおかげで、たぶん日本で一番お薬手帳を念入りに検証してきたんじゃないかというぐらい沢山みています。1万冊は軽く超えるんです。

ここ5年ぐらいで変化がかなり出てきました。最近は専門で開業する先生が多いために、濃厚診療が多くなっているんです。その結果、服薬どうしの複雑な飲み合わせによる事故がとてもとてもとてもとても増えてきました。

薬剤師さんには経験がなさすぎるので、生理、薬理、解剖がわかってる自分じゃないとたぶん判断できない案件が増加してるんです。(CYPを理解しているだけではだめなので)

過剰診療にならないように努力してきた結果として人にはない力がつきました、というお話でした。