文京うまれ

自由と知性

抗生物質と薬剤耐性

抗生物質が効かない菌、というのはとても困るんです。

どうやって菌が抗生物質に耐性を獲得していくかというのはいろいろあるんですが、普通は新たな遺伝子を獲得する場合が多い。

XXXXXXという遺伝子鎖に

XXXXXaXと遺伝子が加わって耐性を獲得する。

で、この二つの菌を比べた時にその遺伝子をコピーするのは遺伝子が短い方が楽ですよね?なのでXXXXXXとXXXXXaXとを混在させて培養するとXXXXXXのほうが優位になっていく、という事が起きます。ゆっくりですけどね。なので自然淘汰という意味では耐性菌は弱いという事になり、猛威をふるうという事は歴史上あまり起きてはいないんです。散発はするのだけれども。院内感染が逆にクローズアップされるわけです。

ところがニューキノロンという抗生物質があり、とても強力なんだけれど、その抗生物質に対する耐性獲得は違います。これは点突然変異で耐性獲得してしまう。

ニューキノロンは、シプロキサン、ジェニナック、オゼックス、グレースビット、クラビットなどの商品名で発売されています。

XXXXXXという遺伝子が、XXXXxXと変化するだけなので遺伝子の長さが同じです。したがって一度耐性を獲得した菌は淘汰されにくいんです。これは大変な事だというのはわかりますか?結核菌など大変な事になりますよ。

なのでニューキノロンは「とどめを刺すまで使え。じゃなければ使うな」が鉄則ですし、その前に「耐性を確認してから使え」が原則です。

あまりにも簡単に短期間、少量、ニューキノロンを使うお医者さんがいますが、彼らは普段から適切な抗生物質の使い方をしていないのでもう使う薬がないのかもしれません。消化器では憩室炎にニューキノロンを使うか使わないかでものすごく悩みます。出すならとどめを刺したいが、あまりにも難治性の場合もあるからです。そして憩室炎は原因菌を突き止めにくい、あるいは混合感染がありえる感染症です。

少なくとも悩まずにニューキノロンを使うような先生には皆さんはかかってはいけない。