文京うまれ

自由と知性

介助者

内視鏡医というのは、あちこちの内視鏡室に勤務することが多い。流れ者みたいに。
自分の上司と自分はこの15年いつも一緒に異動してるんだけど、二人で一致するのが、
「あの人がついてくれると患者さんがゲーゲーしない?」っていう事。

確かについてくれるナースによって患者さんの反射には差がある。
いくつかパターンがあるんだけど、不思議だったのがベテランナースWさん。

ベテランで、丁寧で、患者さんにも優しいのに、なぜ患者さんがゲーゲーするのかね、と上司としばらく話していた。

「彼女自身がびくびくしてない?」「そーかもしれない」
「丁寧すぎて逆に不自然?」「そーかもしれない」
「俺たちの事、『この先生は最高に上手い』って患者さんに言い過ぎてない?」「それ言える!なんかしつこいぐらい俺たちの事上手い上手い言いますよね。あれって患者を逆に不安にするんですかね」(ナースWは僕と僕の上司の事だけを上手いと言うし、なんか信奉者みたいになっていたのは事実だ)
「パニクるんだよね」「ちょっとでもゲーってすると大丈夫ですか大丈夫ですかうるさいですよね。で、手が動いてない」「それそれ」
「やっぱ彼女が緊張してるのかね」「ですね、患者さんに苦痛を与えるかもしれないっていう事に対して敏感なんでしょう」
「良い人なんだけどね」「それとは別の話ですよね」

患者さんの事を思うあまり、あんまり患者さんのためになってないという悲しい矛盾に陥っているWさんの事をちょっとかわいそうに思っていたのは事実だ。





通常は介助者で下手な人は患者さんに対して鈍感です。思いが強いあまりに空振りしているのは珍しいなあ。