文京うまれ

自由と知性

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これは胃癌で、印環細胞癌という種類の癌です。転移が多く、発見されたときには進行していることが多いのです。
例えば10人の内視鏡医がいたとして、8人ぐらいにはこれは見えないかもしれません。(上の写真でわかる人います?)
私も2回に1回は見落とすかもしれません。(絶対見落とさないつもりで見ていますが・・・)
特にこれは10mm以上あるから、見落としたくないのです。
同じように見落としやすい癌にはtub2というタイプの癌がありますが、進行の早さが違います。

ただ、目が慣れてきて、こういう癌でも小さい内に発見できるようになると、恐ろしく進行がはやいと思っていた印環細胞癌も最初のうちはあまり転移を起こさないものがあるのだなあと思うようになっています。
全部じゃないのですが、まったく隆起成分がないこうした印環細胞癌は、粘膜切除を試しにしてみるとすべての細胞が粘膜内ということもあるのです。隆起成分が少しでもあったら、だめですが。

独特のテカリ感が診断の決め手なのですが、癌研の若い先生にはこうした変化、特に女性や老人では背景の胃粘膜すらやや白っぽいのでますますわからないのですが、褪色というやや白っぽい色調は印環細胞癌だよ、と教えます。彼らは偉くて、私だったら出血が怖くて組織を取らない場所でもきちんと組織検査をします。なので彼らの癌発見のsensitivity(感度:発見率)は高いのです。specificity(特異度:正診率)は圧倒的に私が上でも、癌の発見に関しては若い研修医の方が上なので、患者さんは若い先生に是非受けるべきだと思うのです。ただし、癌研のように本当に癌発見が多い施設でないと、こうした真面目さは若い医師には刷り込まれません。普通の病院ではあまりにもはずれが多いから、だんだん萎縮してくるのです。癌研の患者さんはダブル/トリプルキャンサーが普通だし、濃厚な家族歴がある場合が多いから、圧倒的に癌が発見されるのです。それを体験した若い先生は3ヶ月もすればきちんと組織検査をするようになってくれます。

こうした癌が発見できる医師を選ぶかどうかが本当に運命の分かれ目になることがあります。
苦しいとか苦しくないとかそういう事で選ぶんじゃありません。
ちなみにこの方は、別の医師からは逆流性食道炎と診断されていましたが、おかしいと思って私のところに来てくれました。それで運命を自分の方にひきよせたわけです。

ピロリ菌がいるのに、逆流性食道炎なんて普通ありえません。そういう診断をされたら、おかしいなと思って下さい。
(酒たばこ飲みすぎていると、両方混在というのはあり得ますが、それは食道癌・胃癌の超ハイリスク群ですから、見直すべき場合も多い)