文京うまれ

自由と知性

医者の立場と患者の立場

学生さんのレポートが、
医者の立場と患者の立場の差について論じたものであった。
医者は患者の立場に立ちつつ、正しい選択を云々。

なんだろう、この違和感。。。

少し違和感を感じた理由を自分なりに考えてみると、
当院の治療は、最初から患者の立場でしか考えていないので、
そもそも医者の立場という立場がないからであった。

例えば癌があって、どういう治療をすべきか。
正しい知識を持っている自分が患者だったらどういう選択をするか、
あるいは患者さんと同じ社会的背景、経済的背景を持っていたらどういう選択をするか、
そういう事を想像しながら順繰りに患者さんに話していくと、
別に医者だとか、患者だとか、わざわざ分けて考えずとも、
答えは収束していくものじゃないかしら。
というか、僕は医者になってから、あまり患者と意見が食い違ったことがないので。

そして手術が嫌なら嫌で最後まで寄り添ってあげれば良いじゃない?
手術をしない状態でも最善の選択肢だって医者なら考えつくでしょ。
気が変わったら気が変わったで、「おいおい」とか文句いいつつ付き合えば良くないか?
違うの?

ちょっと学生さんのレポートは僕と父のやり方が、
患者に寄り過ぎに感じたのかなんだかわからないけれども、
医者の立場~とか上段から構えていると、
そんなんじゃ、前途多難なんじゃないかとちと思ったりもした。

それよりも、医者の綺麗事を信じちゃってる状態の方が、
勉強不足だと、思うな。例えば胆石の手術って本当に術後の合併症ってあんまりないのか。
生理学の知識を総動員して考えてみれば良い。可能性としてどういう合併症が考えられて、どう対処すべきなのかを。

物事ってのは多元的で、考えれば考えるほど複雑なのだけれども、
考えすぎて損する商売ではないから、もう嫌だっていうぐらい考える習慣をつけたほうが良いと思う。