文京うまれ

自由と知性

追体験をしようとしない人々

医者ってのは患者さんと家族の追体験を繰り返す職業である。

そういう事が出来ない医者もいるけど。

 

必ず過去に同じような事が起きているので、成書を探し、あるいは最近ならば検索をかけ、それを繰り返し勉強し、自分が経験した事と対比しつつ、体験をより強固にしようとする。それは自分への慰めにもなるのだ。

「先生は私の苦悩がわからない」という患者さんがいる。これが子供や若い人なら「うんうん」とうなづくだけであろうが若い人でそういう事を言う人とは会ったことがない。これが中年以降ならば、なるほどあなたは他人の追体験を試みようとしたことがないのだな、と思うだけである。人間には許容量があるようなのでその追体験に耐えられない人がいるかもしれないから強要しようとは思わないけれど、その方法を知らないならば不幸である。